文学研究会騒動記 第9回

 会議の後は会員全員そろって四条河原町で一次会をおこなった。ニ次会は堀内さんと私、坂元、静寂の4人で、堀内さんお気に入り木屋町の「アフリカ」という熱帯雨林の装飾をしたバアで飲んだ。


話の内容は会議後、印刷された期間誌「未(いまだ)」の論評会。今回のメインは堀内さんの友人の作品だったが、


「原稿を友人に託してしかも印刷会に来ないで、こんな単純で簡単な構成で好きな女性の面影を花にみたてた小説を書いている。無責任な人だなあ」

「いや、こういう作品だったからこそ本人は恥ずかしくて印刷会に出て来られなかったんじゃないかなぁ」

話のなかで坂元が講演会に呼ぼうとしている松頼好之氏が大学を卒業し中部新聞の記者をやっていたということで、少し私は安心した。

私は立花隆さんの『中核VS核マル(上)(下)』というような作品を読んでいたので「全共闘で暴れ逮捕」、イコール、「某委員会某セクトの書記長、某のアジトを発見。某居住のマンションを狙い隣室に潜伏、バールを持って壁をぶちやぶり某殲滅に成功」、といった時代錯誤な情景が頭に浮かぶのである。

山村と午前三時の夜中の京都の町を歩いていると、公安にマークされているらしき男を見たこともあった。二人とも早足で歩いていて、時折後ろを歩いている男が距離を縮じめ前の男の靴を踏んだ。前を歩いている男は「やめてくださいよ」と弱々しく抗議するのを見て、この人は昔、学生運動か何かをやって、いまだにいやがらせを受けているのだ、と思った。

 

 

時計をみると午前3:00を過ぎていた。いつものお決まりのコースの四条大橋のたもとの石畳に寝そべって鴨川をみながら、駄弁っていようと思ったが、坂元がしきりに気分が悪いという。しかたなく、今出川別館の部室に運んで介抱するが本当に死にそうだと本人が言うので、午前5:00堀内さんが消防署に連絡して病院にかつぎこんだ。

 カドモス坂元は体格はいいが案外酒に弱いのかもしれない。この前も田辺苫屋館の絨毯の上に大量に吐かれておうじょうしたものだ。