文学研究会騒動記 第5回

 毒舌家の酒村は、南さんを評して、

 

「あの女きっついでー、友達おれへんから昼休みに一階の自動販売機で焼きそば買ってきて部室で昼飯喰っとんねんでー。前なんか、熱いお湯が手にかかって焼きそば全部床に落っことして泣いてたんやでー。ほんまにきっついなー」

 

と言った。何故か、南さんは先輩の内情をよく知っていた。

 

「北村先輩と津島先輩、北村先輩は凄まじい努力をして1夜付けの津島先輩と同じ成績どう思う?」


 私はその時なんとも思わなかった。しかしながら、源植先輩が大学院受験をする三田村先輩に対して「三田村は賢いよ。俺は、あいつみたいなお利口さんにはなれないな」という言葉を聞いて、大学の先生も大量の学生の答案の採点をいちいちやっていられないのだろう、自分の弟子の講師に採点をゆだねていて成績の良い者だけ教授が採点するのではないかと思った。


 やがて和歌山出身で国文科の積極的に文学研究会を建て直そうとしてくれた上川女史、いきなり示現流を教えてくれ、といって驚ろかせた、鹿児島の出水出身の中群礼君、隣接する星の会の会合の合間に出てきてくれた古谷君、静寂君の友達で少し屈折したところのある岩森君、長野県の出身のガソリンスタンドでアルバイトしているという、失礼ながら苗字はおぼえていないが千鶴ちゃんと呼ばれた女性、近くの女子大からは豊橋出身の沢口さん、この女性は常に男所帯に警戒を絶やさず友達をつれてきたなど、常習的に入れかわり立ちかわり部室に入ってきては、なにかを私にぶつけてはノートになにか書き散らし去っていくようになった。