文学研究会騒動記 第1回

1枚の写真が在る。

写真の中心には、顔が浅黒く屈強な上半身を茶色いセーターで包んで飄然とたっている長身の人物と、淡いブルーのセーターを着た無表情な男が片膝ついて写っている。

写真の右下隅には、お猪口を持った細目の学術団の桑原さんが横の人物になにか語りかけている。あたかも「おい、あいつ自信ねえんだな。酔っぱらって立膝ついた中岡慎太郎みたいなかっこしたがって」とからかうようにささやいていた。

 これは、1992年12月に京都四条河原町でおこなわれた文学研究会の4回生送別会で写された1枚のスナップ写真である。

 

 文学研究会というサークルにとって、一、二回生と三、四回生の校舎が離れているために上級生からの知識の継承および対話が期待出来ない上に、文学研究会のふるきよき伝統を支える4回生が卒業によってごっそりぬけてしまうというのは、会にとって致命的な出来事であった。

 

 文学研究会は死に絶えるであろう、というのが言葉には出さないがこの送別会に集まった皆のこころの内にあった。

 

 その中で先ほどのスナップに写った二人、坂元と私の関係は強引ながら1992年11月の大学の学園祭まで文学研究会という小屋を乱暴に引っぱりまわした二人の狂犬として文学研究会の歴史に刻まれてもよいかと思われる。